福山市指定重要文化財

木造不動明王(ふどうみょうおう)立像(護摩堂)

南北朝時代・14世紀後半作 像高98㎝

 護摩堂の本尊で、両脇侍の矜羯羅(こんがら)・制吒迦(せいたか)童子と三尊一具として安置されています。

 左手に羂索(けんさく)、右手に三鈷柄剣(さんこつかけん)を持ち、腰をやや右に捻り、岩座の上に立っています。頭髪は巻髪(けんぱつ)とし、弁髪(べんぱつ)(側面で束ねた毛髪)を左肩上に垂らし、頭頂には七束の莎髻(しゃけい)(花弁状に髪を結う)を表しています。眼は玉眼(ぎょくがん)(瞳を彩色した角膜状の水晶を顔面の内側から嵌(は)める)で、右眼は見開いて前方(やや上方)を睨(にら)み、左眼は上瞼を深く伏せて半眼にして足元に向け、天と地を睨むいわゆる天地眼(てんちがん)とし、口は強く噛み締めて左右の牙を上下交互に出しています。着衣は条帛(じょうはく)・裙(くん)・腰布、装身具は胸飾・臂釧(ひせん)・腕釧(わんせん)・足釧(そくせん)を着けています。

 頭体幹部は正中(せいちゅう)二材矧(は)ぎで、挿首(さしくび)とする、寄木造(よせぎづくり)です。肉身全体は地に布を貼り黒漆を施して彩色しています。

 顔面の彫り口は深く、肉付きの凹凸を強調して表情豊かな忿怒相(ふんぬそう)を示しています。肉取りに量感をもたせ、力強さ感じさせ、全体的に誇張気味の表現の見られる優れた遺例です。

 

徳島文理大学文学部 濱田 宣教授執筆

 

写真撮影:明王院を愛する会

非公開(不定期で第三土曜日に特別公開時外陣より見学可)