福山市指定重要文化財

木造制吒迦童子(せいたかどうし)立像(護摩堂)

江戸時代前期作 像高53.5㎝

 護摩堂の本尊不動明王像の右脇侍として安置されています。 左手は額の高さに挙げて掌を翳(かざ)し、右手には宝棒(ほうぼう)を持ち、左脚を前に踏み出して腰を右に捻り、岩座の上に立っています。頭髪は巻髪(けんぱつ)とし、弁髪(べんぱつ)(側面で束ねた毛髪)を左肩上に垂らし、頭頂には四束の莎髻(しゃけい)(花弁状に頭髪を結う)を表しています。眼は玉眼(ぎょくがん)(瞳を彩色した角膜状の水晶を顔面の内側から嵌(は)める)で、両眼とも見開き瞋目(しんもく)とし、口をへの字に結び忿怒相(ふんぬそう)を表しています。着衣は領布(ひれ)(両肩に掛ける布)・裙(くん)、装身具は臂釧(ひせん)・腕釧(わんせん)・足釧(そくせん)を着けています。

 頭体幹部は前後二材矧(は)ぎで、挿首(さしくび)とする、寄木造(よせぎづくり)です。肉身は朱色を施し、着衣には菊花文・羯磨(かつま)文・龍などが彩り鮮やかに描かれています。一部には盛り上げ彩色(胡粉を文様状に盛り上げて彩色する)も見られます。短躯ながら、姿態バランスの整っている彫技の巧みな江戸時代の秀作です。

 

徳島文理大学文学部 濱田 宣教授執筆

写真撮影:明王院を愛する会 非公開(不定期で第三土曜日に特別公開時外陣より見学可)