護摩堂の本尊不動明王像の左脇侍として安置されています。

　両手で未敷蓮華茎(みふれんげけい)を持ち、右脚を少し前に踏み出して岩座の上に立っています。頭髪は頭頂から耳の後ろにかけて背部に長く垂らしています。眼は玉眼(ぎょくがん)(瞳を彩色した角膜状の水晶を顔面の内側から嵌(は)める)で、左に首を傾(かし)げて右やや上方を見やり、緩く結んだ口元も含めて、虚ろで愛念の相を微妙に表現しています。着衣は条帛(じょうはく)・裙(くん)、装身具は胸飾・臂釧(ひせん)・腕釧(わんせん)・足釧(そくせん)を着けています。

　頭体幹部は前後二材矧(は)ぎで、挿首(さしくび)とする、寄木造(よせぎづくり)です。肉身は白色を施し、着衣には唐草文・輪宝(りんぼう)文・獅子などが彩り鮮やかに描かれています。一部には盛り上げ彩色(胡粉(ごふん)を文様状に盛り上げて彩色する)も見られます。短躯ながら、姿態バランスが整っている彫技の巧みな江戸時代の秀作です。

徳島文理大学文学部　濱田　宣教授執筆

写真撮影：明王院を愛する会

非公開（不定期で第三土曜日に特別公開時外陣より見学可）

●不動明王像（市重文・南北朝時代／護摩堂）

＜このページ＞●矜羯羅童子像（市重文・江戸時代／護摩堂

●制吒迦童子像（市重文・江戸時代／護摩堂）

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